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佳兆(かちょう)

41号から
 
国民文化祭委員会委員長
岡田一郎
第二十二回国民文化祭
海陽町「阿波海部刀の世界」を終えて
 日本刀は、わが国独自の美の世界を示す美術刀剣であり、海部刀は、阿波の国(徳島県)を代表する文化遺産であります。
  中世戦国の昔、海部川のほとりに六十数人の海部の刀工が発生し技を競いました。
  海部城主は、自ら刀を鍛えると共に、全国の各地に名工の技を導入し、個性豊かな切れ味抜群の海部刀を創作しました。
  名物岩切海部(阿州氏吉作)は、三好長慶に愛用され広く世に知られております。
  この外、海部刀の代表作には、「阿州住氏重」、「阿州住氏九作」、「阿州氏善作」、「阿州氏泰吉さく」、「泰長」等、氏と泰を冠するものに優れた作品があります。
  ちなみに、応永二年の年記銘のある「師久」は、地鉄細美、素剣と梵字の彫りがあり、刀縁が明るく、凛として品格があります。
  この脇指の作柄を吟味しますと、大和から九州薩摩の波平へと伝達され、そして、阿波の海部へと導入されたことを知ることが出来ます。
  このような重要刀剣クラスの海部刀を本大会に出品して鑑定していただきました。海部古刀の上作が五〜六百年あまりの時空を越えて、今日尚燦然と輝いている様を見て驚きの声があがりました。香川県から参加していただいた辻功支部長は従来の海部刀に関する知識と概念を一変させる物であった、と語られておりました。
  また、大坂の陣で戦功のあった片切刃造りの海部刀、外に例を見ない「のこぎり刃造り」の海部刀、他に例を見ない「のこぎり刃造り」の海部刀、独自の樺巻鞘拵等を鑑賞して、個性ゆたかで創造性に満ちた海部刀に大きな感動を覚えたとの発言もありました。
  本大会に出品した海部刀六十口、助則の太刀など海部刀以外の参考刀七口、堀江興成の三所物などの刀装具八十七点を提示し、「阿波海部刀の世界」に迫っていただきました。本大会の最大の目的は、従来から海部刀は田舎鍛冶が作った凡刀であるという一般評価を払拭し、その真価を世に問うことでした。県外から来られた愛刀家の一人は「こんなに海部刀がすばらしいとは知らなかった」と語ってくれました。このような好感度の広がりを今後に期待したいと思います。
  次に関連行事について居合道演武は、坂本氏、一村氏、福井氏の三剣士の息の合った真剣な刀さばきが見事でした。
  河内國平刀匠による講演「日本刀の魅力」(現代における作刀技術の伝承の難しさ)は師匠の「刀を鍛えることの原点は人間を鍛えること」、という透徹した理念は聞く者の魂を揺さぶる思いがいたしました。
  また、河内國平師匠とその弟子による鍛刀実演は「鉄に命を吹き込む」真剣な行程が展開され大勢の観衆がくぎづけになりました。海部刀の鑑賞体験会は、日刀保徳島県支部会員の適切なアドバイスによって、日本刀を手に取って見るという初体験者の感動は大きく、それぞれに国文祭の忘れがたい思い出づくりになったようでした。
  海部御鉄砲再現火縄銃演武は、岩国藩石田流鉄砲隊保存会の林隊長のご配慮により、文化村の中庭において整然と演武がなされまし。初めて見る火縄銃の操作と轟音は郷土史の一ページを飾るもので、いつの日か海部鉄砲の再現を夢見るものでしょう。
  シンポジウム「阿波海部刀の世界」は、坂本氏の中世海部の交易、海部刀の作柄、海部拵について。東條氏は、名物岩切海部と戦国武将三好長慶の天文文化、阿波正阿弥鐔や阿波象嵌について。杉山刀匠は、平成の海部刀の復元、のこぎり刃の製作がいかに困難かを自らの体験を語ってくれました。研師三好氏の日本刀研磨実演には人垣が長時間続きました。
  最後に、東條氏の阿波の伝承文化は、「阿波藍と阿波踊りと阿波人形浄瑠璃だけであるまい、阿波を代表する海部刀を加えるべきだ」、との提言がありました。大会の入場者約五千四百人、好天に恵まれ大成功でした。