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佳兆(かちょう)

40号から
 
大和郡山市長  上田 清
『佳兆』十周年によせて

 毎号、楽しみに読ませていただいている『佳兆』が創刊十年、重ねて四十号の大きな節目を迎えられました。
 河内様ご夫妻をはじめ、関係の皆様に敬意を表するとともに、心からお慶び申し上げます。誠におめでとうございました。
 河内様とは、不思議なご縁をいつも感じております。
 ひとつは、私の父(元・奈良県知事・杉浦注)が懇意にさせていただいていること。今も『佳兆』愛読者のひとりです。そしてもうひとつは、郡山高校野球部を通じてのご縁。息子同士が偶然チームメイトとなり、三年間にわたり甲子園をめざして苦楽を共にしたことは、彼らにとっても生涯忘れることのできない貴重な体験であったと言っても決して過言ではないと考えています。
 親子三代にわたるご縁にあらためて感謝申し上げますとともに、刀匠河内國平様のますますのご活躍をお祈り申し上げる次第です。
 ところで、今から十年ほど前のことになるのでしょうか、郡山高校野球部保護者の関係で、東吉野の鍛刀場を見学させていただいたことがあります。
何とも言えない緊張感に包まれながら足を踏み入れた真っ暗な作業場に響く鎚音と、鋭い火花、そして若いお弟子さんたちの真剣なまなざしと気迫は、今もはっきりと記憶に残っています。
 テレビなどの映像と、目の前で直接見るのとは迫力が違いました。しかも、古代から連綿と続いてきたものづくりに対する畏怖のようなものを、言葉ではなく、体を通して感じることができたように思うのです。
 刀のことを尋ねると、河内様の口からは情熱のこもった言葉が次から次へとあふれ出てきますが、わが国の代表的な伝統工芸に対する熱い、熱い思いが、たとえば刀剣製作古法「大和伝」の修得に広がり、あるいはリトアニアとの交流といった事業につながっているのではないかと受け止めております。
 一方、わが国の伝統工芸を保存、継承するうえで大きな役割を果たしてきた大事業に伊勢神宮の式年遷宮があります。
 二十年ごとに建物をはじめすべてが造り替えられるこの事業、建物の部材などは全国の神社でしっかりと再利用するとともに、さまざまな祭具や調度品を作り直すことによって、工芸に関するあらゆる技術や知識、知恵を次の世代に伝える見事な仕組みだったのです。
 大人になる二十歳ごろまでは見習いとして親を助け、三十代までに親方として仕事を仕切るようになり、四十代には隠居して後進を見守る・・・。
 二十年ごとに行われてきた式年遷宮は、人生のそうしたサイクルにあわせたものだと聞くにつけ、先人の知恵には驚くばかりです。
 戦後、この世代交代の大切さについてあまり省みられなくなったことは、伝統工芸だけではなく、あらゆる分野に計り知れない影響を与えているのかも知れません。だからこそ、多くのお弟子さんとともに頑張っていただいている刀匠河内國平様に心からエールを送りたいと存じます。
 平成二十五年の第六十二回遷宮に向けてすでに平成十七年から諸行事が始まっていますが、この遷宮にあたって三振の遷宮太刀を製作、奉納されたと伺っており、重ねてお喜び申し上げます。
 ここまで書いてふと、ある高名な職人さんが、こんなことをおっしゃっていたことを思い出しました。
 「伝統工芸というのは、壊すことであり、創ることである。」
 つまり、ただ単に技術やデザインをそのまま継承するのではなく、一度自分で消化したうえで、新たな命を吹き込む、そんな意味に受け取ればいいのでしょうか。壊すことと、創ること・・・。私たち素人には窺い知れない、豊かな世界がそこには広がっているような気がしています。
 また、あるテレビ番組で、全国の日本庭園を手がける庭師の言葉も強く印象に残っています。
 すなわち、「ものづくりは人づくり。自分が作った庭園が一人前になる三年後、五十年後、あるいは百年後に私の思いを受け止め、さらに後世に伝え るのは結局は人。ものづくりは、つまるところ人づくりなのです」。
 今回初めて、ホームページを拝見しました。
 そして「無玄関」という新鮮な言葉に、刀匠河内國平様の、覚悟と意気込みを垣間見たような気がしています。
 ますますのご活躍、ご発展をお祈りし、拙い文章を閉じさせていただきます。
 誠におめでとうございました。

事務局・編集担当より
 月日は先を見ると長く、振り返ると短く感じます。
「杉浦さんチョット相談したことがあるんやけど」の河内刀匠の言葉で始まった「佳兆」、紆余曲折の中十年の歳月が過ぎました。
 ひとえに読者の皆様のおかげと感謝いたしております。
 次の十年・二十年(チョット無理かも?)を目指しがんばります。何かと騒がしい刀剣界、小さな事かもしれませんが地道な活動をご理解戴きより一層の御支援頂きますようお願い致します。
                                 (杉浦 記)