佳兆
(かちょう)
34号から
奈良県立橿原考古学研究所
付属博物館館長 松田真一
古代刀剣の復元展によせて刀
考古学は過去の人間の諸活動の結果として遺されたあらゆる遺跡や遺構、そこから出土する遺物を対象として扱っています。
対象とする資料の分析や操作を経て、歴史の実像を明らかにすることを目的としていますが、そのためには実はさまざまな関連した諸学との連携が必要な学際的色彩の強い学問といえます。
このたび、弊館において特別陳列「古代刀剣の復元」を企画しましたが、ここでも刀剣の出土した状況分析や、形態的特徴による分類など従来の考古学的な研究手法だけでなく、刀剣の製作技術的側面からもアプローチする研究が是非とも必要であろうという趣旨で、奈良県立橿原考古学研究所で立ち上げた以前からの刀剣研究の実績を踏まえて、館としても表題の展示案を暖めていたものです。
さて、刀と剣はどちらも古墳時代の代表的な武器で、被葬者に添えられて副葬される事例は枚挙に暇がないほどです。
このことは実用的な面においても、また、権威を示す意味でも当時の権力者にとって不可欠なものであったことを示しています。
古墳などから出土する刀剣は永く地中に埋もれていたため、厚く錆に覆われ劣化が著しく進行している場合が多く、当時の姿をそのままとどめていのはほとんどありません。
そこで今回の目的のひとつは、錆びた刀剣に遺された数少ない情報を読み取り、製作された当時の刀剣をできるだけ正確に復元し、多くの方が古代刀剣についての理解を深める切っ掛けになればという意図がありました。
いまひとつは、古代の製作技法にできる限り接近した復元を通して、古代の刀剣製作に潜む様々な技術的問題を浮かび上がらせようと考えたことで、冶金、金属加工、木工などの分野の専門家の協力を仰いだところです。
加えて実際に今も日本刀製作に携わっておられる伝統技術保持者としての考えは、何をおいても欠くことのできない最も重要な指摘でした。
代表的な復元品である藤ノ木古墳から出土した大刀と剣をみると、古代刀剣のもっている迫力や豪華さが伝わってきます。
また本誌三十三号に紹介されている「七支刀」製作の検討も、そのような共同研究のなかから生じたもので、諸説ある従来の銘文研究とは異なる視点として評価することができ、「七支刀」研究に一石を投じることにもなりました。
このたびの展覧会は本誌を主宰される刀匠河内國平氏が、昨年奈良県無形文化財保持者の指定を受けられたことに因んで、これまでの刀剣復元品とその研究成果を一堂に披瀝したものです。
古代技術の結集ともいえる刀剣とその製作の実際を、十分に堪能していただけるまたとない機会とすることができました。