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佳兆(かちょう)

27号から
 
 
無玄関の養氣塾のご報告

 5月15日、大阪府在住で愛刀家の徳平氏宅に河内國平刀匠夫妻をはじめ独立した一門の弟子5名、篆刻家の真鍋井蛙先生、本誌編集者が集合し、河内一門を応援する「無玄関養氣塾」の今後の活動について意見を交わした。
 午後7時から始まった議論は、深夜2時にまで及んだ。
 今回は、この集まりの概要と議論の結果に出された今後の方向性をお伝えする。
 「無玄関養氣塾」は。本年3月、研究活動への経済的援助や展覧会、広報活動などを通じて河内國平とその一門の刀工たちの活動を支援する集まりとして発足した。
 精神的にも経済的にも塾を栄えてくださる徳平氏、愛刀家であるだけでなく夢想神伝重信流居合道をも修練し「一振りの刀によって精神(氣)を養う」ことを信条とされており、この言葉が「無玄関養氣塾」の由来となった。
 徳平氏御夫妻と一部関係者だけが集まった三月の時点では“塾”の具体的な活動内容につては未だ定まらず、すべての弟子から意見を聞きよく話し合った上で、設立の趣旨に沿う活動を行うのがよいという結論であった。
 そこで今回の会合に先立ち、アンケートという形ですべての弟子から意見や要望を聞いた。アンケートの回答には、それぞれの個性がよく出ており、回答用紙では書ききれない思いをわざわざ長い文章に綴って送る者もあった。
 会の冒頭に徳平氏から発足の趣旨について説明があり、河内國平一門の刀工たちによる「昭和・平成に残る名刀づくり」を応援したいという思いが述べられた。
 國平氏はこれを受け、刀剣界で少しずつ認知されつつある一門が、よい作品造りを通じて斯界に貢献していきたいと、一門の責任者としてその心構えを述べると同時に故宮入昭平師から教わった「金を残すは下、名を残すは中、人を残すは上」という言葉を通じて弟子たちを激励した。
 その後、すでに独立した五人の弟子たちが、先に回答したアンケートの内容に沿って養氣塾での活動に関する自分自身の考えを説明した。
 弟子たちは発起人である徳平氏への感謝の気持ちを表す一方、未知の活動に対する様々な戸惑いも率直に述べた。
 一定の期間を区切って一門による共同研究を行うことについては、長期間地元を留守にできないことや、具体的な目標を設定して結果を出すことの難しさなど慎重な意見があったことに加え、共同研究ではなく個別の研究こそ大輪の花を育てるという意見もあり、共同研究については現時点で全員が集中して取り組める状況ではないことがわかった。
 一方、作品の販売促進と研ぎなどの外注工作にかかる資金確保は、すべての弟子が共通に抱えている問題だった。
 まず、販売促進の方策については、すでに開設されているホームページ「無玄関」をさらに充実させて行うことになった。
 作品の出来はもちろん、刀工の人柄や情熱にふれ、その人物に惚れ込んで作品を求める愛刀家が多いということを現代刀の特徴と捉え、目標に向かって不断の精進を重ねる一門の刀工の横顔や作品の魅力について、現在のサイトに新たにページを増設し広く発信する取り組みを進める。一門の生の声や作品情報を集め、佳兆の読者の皆様にも楽しんでいただける魅力的なホームページ造りを目指すこととなった。
 さらに、刀剣専門誌以外の趣味的な高級月刊誌などに一門の活動を紹介する試みも効果的なPR手段として検討していきたい。
 また、展覧会や作品発表会の地方での開催を求める声も多く、「一門作品集」の作成というアイデアもあった。
 これらについては今後さらに意見交換を綿密に行い実現に向けて検討することとなった。
 外注工作などに要する多額の経費の確保は、刀工という職業に特有の問題であり悩みの種になることも多い。
 もちろん自己努力が前提ではあるが、それでも資金確保が困難な場合には、一定のルールを決めて支援することも必要との結論に至った。
 いま、河内一門という刀工集団が少しずつ世に認知されようとしている。
 しかし一人ひとりの職人は、将来の不安と戦いながら技術の壁を乗り越えようと懸命である。養氣塾は、これからの心強い支援組織に育っていくことだろう。
 しまし、つまるところ自分しかいない。自己との格闘を続ける者こそが「氣を養う」一刀を鍛えることが出来る。
 「名門になってはいけない。名門になると緊張感を失うぞ」という國平氏の弟子への教訓が特に印象深く耳に残った一夜だった。
 
(占川 記)