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平成15年5月25日、小雨混じる中福岡県京都郡勝山町長川(みやこぐんかつやまながわ)にて宇都五郎國之刀匠による火入れ式が行われた。私は日ごろから河内國平刀匠を撮影してきた関係で、宇戸刀匠には河内國平親方の元での弟子時代に東吉野で合いそのご縁で出席させてもらった。新しい宇戸刀匠の鍛刀場はこんもりとした林が開けた場所で古墳が点在する長閑な場所にあった。近くの黒田と言う土地には綾塚古墳(6〜7世紀の横穴石室古墳)や橘塚古墳(同じく6〜7世紀ごろ、巨岩に覆われた横穴式石室)があり正に古人が見守る神聖な場所である。刀を作ることは精神的な部分でも大きな「気」を要する部分があり新刀匠誕生に相応しい条件が揃っているかの様である。
当日、宇戸刀匠に朝会った時にはまだ絵顔も見られ余裕があったが、午後1時の式典開始時刻が近づくに連れそわそわした所は若い青年だなと感じた。
今回で4回も河内國平親方のお弟子さん達における火入れ式、司会進行を勤めてきた杉浦良幸氏の慣れた進行で式典クライマックスへと進んだ。
その「火入れの儀」では宇戸刀匠が7年余り修行してきた技術を見事に発揮され、火付け棒(長さは30Cm、太さは2Cm程度の軟鉄の角棒)が赤らみ、付け木(薄くカンナで削った様な杉の木に硫黄を先に塗布した木)から和紙へそして火床(ほど)の炭へと見る見るうちに火が移る流れは80名余りの見学者達の拍手喝采に至り、カメラを構えながら私も興奮した。後で河内國平親方から聞いたことだが、火付け棒は均等に細く決してひし形に成らない様に叩かなければ摩擦熱を持たないらしい。又叩きすぎて軟鉄が割れても熱が逃げ火は起こらないとの事。改めて簡単にやってのける河内一門の素晴らしさを知る。
 すかさず火が宿った火床に玉鋼を沸かし水圧(みずべし:玉鋼を平らな状態まで叩いて伸ばす)が行われた。静寂した式典で高く鳴り響く槌のリズミカルな音は大地に降っていた雨までも一時止ませ、薄日が射すまでになり弟弟子の2丁先手、(2名で10Kgある槌を振り下ろす)迫力あるシーンや石田四郎國壽刀匠も加わり3丁の先手(今は見ることが珍しい向槌)の披露もあり無事、古式に則った式典が終了した。
ここ数年、若い人たちの意識が低下しともすれば我慢が出来ない事が不幸を招く事件が相次いだ。私は今日誕生した真に見事に鍛え上げられた肉体と精神を持つ素晴らしい若者「宇戸五郎國之刀匠」、惹いては忘れていた耐える事、弱音を吐かない事。あきらめない事を目の当たりにした。この素晴らしい精神を写真で多くの若者に伝えられたらと思いシャッターを押すのだと感じた。
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